吉備楽コンサートin ロンドン
岡田典明(中近畿支部・伊勢教会) |
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![]() 「金光教には、祭典音楽と吉備舞がある。実際に演奏を観てみたい…。」SOAS 日本宗教研究センターの要請がきっかけで、今回のコンサートは実現しました。当初は、費用や日程の関係もあって、会組織としてはおことわりをしていたようですが、吉備舞を知っていただく絶好の機会だから、何とかお引き受けできないものかということで、結局、有志による参加となった次第です。 参加メンバーは、笙(太田昭子)、篳篥(河野栄一)、龍笛(井出春中)、箏(櫻井君江・鶴見和子・山根修子)、舞人(越智晴江・伊藤穂乃香…桜狩 蜂谷裕子…箙之梅)、舞指導(金光健子・越智正子)、解説・指揮(岡田典明)の12名に加え、原真貴子、伊藤孝一の両氏が参加され、いろいろとお手伝いいただきました。 ![]() 普段楽を聞き慣れている日本からの参拝者は、そのお姿に接し、改めてご祭事における典楽の働きと重要性に気付かされたようなことでした。とりわけ、イギリス人の信奉者にとって典楽は初体験でしたから、その関心ぶりは我々の想像以上でした。楽器にも興味を持たれた様子なので、急きょ楽器の説明をする時間を取ってもらい、篳篥とオーボエの共通性や、笙とハーモニカの関係など、熱心に聴いてもらいました。演奏もさることながら、楽器そのものが日本の文化を伝える大切な材料であることを実感しました。楽器に興味を持つのは、当たり前と言えばその通りでありましょうが、扱いなれている我々としては、忘れている感覚を呼び覚まされるような一時でした。 英語の祭詞と典楽の調べもまた不思議に調和するものです。むしろなんの違和感もなく厳粛なご祭事をお仕えできたものと思います。 ![]() 当日の出し物は「桜狩」と「箙之梅」でしたが、私には、国際センターから解説の依頼がありました。英訳して、当日配布用のパンフレットに用いたいとのことでしたので、この機会に、譜本の解説だけではなく、金光教と吉備楽及び中正楽の関係についても知ってもらいたいと思い、その旨国際センターに申し入れ、了解を頂きました。 私がこだわったわけは、金光教と吉備楽にとって、今年は記念すべき年であったからです。それはどういうことかと申しますと、吉備楽が正式に金光教の祭典に用いられたのは、明治23(1890)年であって、ちょうど120年前のことであります。なんとその記念の年に、ロンドン公演が実現したわけです。ご神慮の賜物としか言いようがありませんね。 ![]() その後、センターから各楽器の説明文の依頼がありましたので、簡単な解説文を送りましたが、一番肝心な当日のプログラムがはっきりせず、準備に困りました。結局プログラムの企画もお願いしますということで、急きょ井出先生とも相談し、まとめ上げました。 持ち時間は2時間を超えるとのこと、正直どうしたものかと当初は面喰らいました。2曲とも長い曲とはいってもとても間が持ちません。あれこれ考えているうちに、はっと思いつきました。SOAS の研究者たちは、祭典音楽たる吉備楽、吉備舞を観たいと依頼してきている。桜狩と箙之梅は吉備舞に違いないが、余興楽、この場合はその中の歴史舞であって、純粋な式楽、すなわち祭典楽ではない、宗教音楽を期待しているのならばそれに応えねばならないのでは…。それには式楽としての吉備楽とともに、どうしても中正楽をプログラム入れたい。それを実現するには、模擬でもよいから祭典をやりたい。瞬時によぎったこの案は、先方にも了承され、山田信二所長祭主によるご祭事が、ロンドン大学の会場で実現したのでした。画期的な出来事であったと思います。 ![]() 海外布教において、典楽の果たす役割がいかに大きいものか、ロンドン大学の研究者との交流を通じて実感しました。その際英語が話せたら、いっそうお役に立てるのに…、との思いもありましたが、それ以上に大切なことは、外国人に伝える前に、自国の文化や伝統についてよく知ること、何よりもお道の信心をしっかりとしたものにしていなければならないと痛感しました。これからの課題でありましょう。 |
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