記念曲制作ものがたり
その38 発注する

曲目のタイトルが決まると、楽譜やCDジャケットに反映させなければならない。
楽譜については、典楽譜は私のところで最終的な浄書を作成する。洋楽譜は、M氏のところで責任をもって浄書データを私に送ってもらうことになっていた。

ところで、このたびの典楽譜は、通常の典楽奏法を一部変えて演奏することがある。そのような留意点をまとめて載せなければならない。また、洋楽譜においても、これを演奏する人たちにとって典楽とのセッションは初めてであろうから、典楽の楽理も含めて説明がいるだろう。この2つもM氏と私とで分担して文章化することにしていた。

楽譜の装丁をどうするのか?ご承知のように、洋楽譜は基本的に横書きであり、左から右にページをめくっていく。一方、典楽譜は縦書きであり、反対に右から左にページをめくる。それも横長の用紙である。「典楽譜を上開きにしてめくるのはどうだとうか?」「別の楽譜として2部つくるのは?」などと思案をめぐらせていたところ、印刷会社の方から「それならひっつけたらいいじゃないですか」と一言いわれ、目からうろこであった。どうも、楽譜に限らず、本は表紙があり、そこから裏に向かって読み進めるものであるといった固定概念があるようで、表も裏もない、あるいは両方が表の本なんて考えもしなかった。典楽譜は従来の横長用紙から縦長に変わるが、こうして左から開くと洋楽譜、右から開くと典楽譜という装丁は決まったのである。

ところが、奥付をどこに付けるのかでまたまた迷ってしまった。これで裏面が決まるのである。洋楽譜、典楽譜の終わりにつけると、楽譜の中になってしまう。
ここは典楽の営みから始まったものなので、洋楽譜の表紙裏に付けさせてもらうことにした。そして、制作の願いと曲目の説明を典楽譜側の冒頭につける。もう表裏は決まったようなものである。
そして、M氏から届いた楽譜のデータと私のところで編集した典楽譜のデータを合わせ、印刷会社に渡すことができた。本当は、表紙とか凝りたかったのだが、とてもそのような時間はとれそうもない。今となっては、少々残念である。

さて、CDのジャケットは少しデザインらしきものを施さねばならない。「教祖讃仰」というネーミングからすぐに立教聖場が思い浮かぶ。あれこれ考える時間もないので、とりあえず表紙においてみる。「なかなかいいじゃないか」。調子に乗って裏面も立教聖場の内部を貼り付けると、表紙との関連もあり、それなりにいい。形は決まった。中に書くべき文章は、楽譜の時にできているので、それを修正しては貼り付けるだけで、時間的にはそうかからない。若干の装飾を施すと完成である。短時間の作業にしては、けっこう無難に仕上がった。

最初は、典楽の演奏者の名前を入れていたのだが。役員の方から「はずした方がいいんじゃない」という指摘を受け、迷ったのだがはずさせてもらった。
せっかく演奏のための練習や録音までやってもらったので、せめて名前だけでもとの思いがあったのだが・・・・。ごめんなさい。そしてお疲れ様でした。

こうして、ぎりぎりではあったのだが、何とか記念曲に関わる印刷物が全て完成し、業者に渡すことができた。CDの音源は、P社から直接送ってくれるらしい。
どうやら、間に合ったようである。