記念曲制作ものがたり
その37 編集をする

だんだんと時間がなくなってきた。
記念式まで、もう1か月しかないのだが、楽譜は未だ検討途中。録音は、打楽器の編集待ち。大丈夫なのだろうか???

おっと、そんなことを思っていると、まだ曲名を決めていないことに思い至った。
教祖のご事蹟から3つの場面設定をしているので、いわゆる組曲として考えることができる。また「教祖」の名前ははずせないだろう。
いろいろ考えて「組曲 教祖讃仰」というタイトルを思いついた。役員会では異論なかった。
M氏にも伺ってみる。タイトルはそのままで副題として「典楽とコーラスのための」と付けたらどうか、と提案された。
「典楽とコーラスのための組曲『教祖 教祖讃仰』」
「なかなかいいんじゃない」

曲名がほぼ決まったところに、K氏から、打楽器の修正版が到着した。早速、業者に送り、ミックスダウンの日程を相談する。
1月27日に決めた。完全音源からCDを制作するのに、ジャケット印刷やパッケージのフィルム等々の作業を含め、二週間ほどかかるらしい。ほぼギリギリセーフとなる。なんとか間に合いそうだ。
そして、打楽器のはいったフル編成の曲を何回も聴き、間違っているところをチェックする。
少し余談になるが、今回、検討用の楽譜として、洋楽譜、典楽譜の両方を準備していた。何回も聴く中で、使用するのは洋楽譜だけになっていた。なぜかというと、使いやすいのである、流れていく音を楽譜で追うには、間違いなく典楽譜よりも洋楽譜の方が機能的なのである。これは、この作業を行う中での実感であった。
ミスは、圧倒的に打楽器が多い。K氏のところでも、かなり修正してもらっているのはわかっていたが、修正しきれなかったのだろう。

朝9時に岡山市内にあるPという音響会社のスタジオに入る。
いかめしい機器が一杯並んでいる。前もって送っておいた打楽器の音源は、もうセットされていて、打楽器ごとに一つのトラックに収まっていた。
「とりあえず、聴いてみましょうか」という業者の方の声にうなずいて、1章から3章まで聴いてみる。コーラスの収録に感じた曲想とは、また変わっている。ずっといい。
気になっていた、打楽器の打ち間違いも気にならないようになっている。さすがK氏である。特に3章では、コーラスの収録時では出だしは笙のみであったが、ここに打楽器が加わることによって、別物の音楽に聞こえる。非常に効果的に打楽器が使われているという感じを受けた。

さて、今回の作業は、各楽器やコーラスのパートごとの音量を決めるとともに、間違いを修正し、それをステレオのLRに振り分けることにより、どの楽器がどの位置で演奏されているのかという音像の定位を決めるものであり、最終段階の作業となる。ここで仕上がった音源がそのままCDになるのである。

第1章から順番に行う。
最初に、コーラスの響きをどう生かすかということで、業者の方と相談を行う。コーラス用に立てられたマイクからの音源を普通に流すと、大きな声の方が丸わかりになるのである、その結果、パート毎の響きは損なわれ、少人数で歌っているように聞こえてしまう。実際の収録では、そうは感じなかったのだが、立てたマイクの位置によって、こうなったのだろう。

そこで、パートごとに立てられたメインのマイクをサブに回し、遠目に立てたマイクをメインにして、サブを調整することで、パート毎の輪郭を出すという方法をとった。するときれいに響きはじめたが、子音が聴き取りにくい。サブを上げすぎると個人の声が出てくるし、低すぎると歌詞が聴き取りづらいのである。その調整に少し手間取った。

そして、修正箇所の修正である。何回か収録された音源は、全てコンピュータに入っているので、間違っている箇所に、正しく演奏されているテイクのその部分をコピーして、貼り付けるといった切り貼り作業を基本にして修正していく。
打楽器の間違いは比較的簡単に修正が可能だ。ただ、あまりに数が多い。これもことのほか手間取ってしまった。

難しいのは、オルガンや笙のような連続して音が流れる楽器である。別のテイクから同じものを切り取って貼り付けても、若干リズムや音量が違うことにより、前後に違和感が出てしまう。慎重にカット&ペーストし、検聴してはまた補正を繰り返していく作業が続く。

そして各トラックのミックスである。この時に、このCDを聴く者に対して、どの楽器を、どの位置に定位させるかが決まる。私の中では、ある程度想定はしていたのだが、やはりプロの意見も聞きたい。しばし相談の上、コーラス3パートは、中央にアルト、向かって左側にソプラノ、右側に男声をできるだけ中心に近づけて配置した。典楽器は、中央寄りの右側に笙、篳篥、龍笛の順に配置した。打楽器は、コーラスや典楽器の後ろに中央を太鼓、左に鞨鼓、右に鉦鼓といった具合に配置した。
2章で使用するピアノは左側にした。オルガンについては迷ったが、全体にかぶせるように左右から聞こえるようにした。2章全体を包み込むように支える響きとなるように。

あとは、各楽器のボリューム調整である。一番迷ったのは、典楽器とコーラスの音量のバランスであった。本来なら、コーラスが入れば典楽器はボリュームを下げてコーラスを生かすのだが、となると典楽器はコーラスの伴奏楽器なのか、という問いかけが一方にあって、なかなか踏ん切りがつかない。あーでもない、こーでもないと業者の方と話をしながら、ようやくある一点で落ち着いた。
ノリとしては、「コーラスとともに歌う典楽器」である。

終了したのは、夜の8時を回っていた。この間缶詰状態・・・・。疲れた。
しかし、CDのジャケット作成や、楽譜の装丁等、やらなければならないことは、まだまだある。ほんとうに間に合うのだろうか。