記念曲制作ものがたり
その30 新曲、最終検討

8月28日、大阪のO教会で、新曲の最終検討が行われた。まだ、作曲者へ問い合わせている課題、問題点は残っているのだが、ここからのスケジュールを考えると、決して早くはない。このあと、収録やCDの作成を残しているので、まずは大筋での合意を得て、細部は作曲者とのやりとりで決めていくしかない。

最終検討ということで、M氏に依頼して大阪芸大の学生数名に、コーラスやピアノ・オルガン関連の意見聴取のため来て頂いた。なんでも、雅楽と洋楽の融合というテーマにすごく興味がある人たちであるらしい。残念ながら、当日はピアノを演奏していただく予定の学生が体調不良のため欠席となったので、専攻でない方がなれないピアノを弾いてもらうことになった。また他の方々は、コーラスパートを実際に歌ってもらうことにした。

典楽側は、各楽器1管ずつのフル編成で集まってもらった。各章ごとに検討を加えていく。

コーラスの音域的には、各パートともに問題はないようである。決して難しくはなく、声域も適正らしい。ただ、打楽器がリズムになかなか乗っていけないようである。
打楽器は、典楽の世界では、一つの定型パターン通りに演奏される。したがって、今回の新曲のような、楽譜を追わなければ叩けないような曲は初めてなのだ。ゆえに遅れる、叩き間違える。
ずっと笙のことが一番の課題であったが、実は打楽器の方が問題は根深いのではないか。そんな気がしてきた。

龍笛、篳篥は問題ないようだが、箏は相変わらず典楽の箏爪では音量がなくて弾きにくいと言われ、生田流の箏爪で演奏していた。試しに典楽の箏爪で弾いてもらったのだが、聴く方にとって音量も含め別に変わりはないようである。何が問題なのか聴く側は分からないのだ。
生田流の箏爪を知らない人にとっては、典楽の箏爪で弾いても、こんなもの・・・・で済んでしまう問題なのだろうか。

笙は、作曲者の記譜のものと、典楽会で記譜したものと2つを試してみた。
典楽会で記譜したものの演奏は、学生らにとっては、結構微妙であるらしい。どこかに和音の不協和が感じられるとのことだったが、まったくなじめないことはないようであった。

ここで一つ、私が提案してみた。2章の洋楽ピッチの曲に笙を入れてみようというのである。「440Hzと430Hz」を壁としてずっと言ってきたが、それが果たしてそんなに大きな壁なのか、が自分の中でずっとひっかかっていた。今日のような、芸大の学生もいる前で検証できる場は、滅多にないだろう。一緒に聴いて、ぜひ感想を聞いてみたい。

笙の記譜は、そんなに難しくはない。適当につけてやってみる。
私の感想は、「ちょっと合ってない気はするけど、聴けなくはないじゃん!」であった。
ところが芸大の学生さん曰く「めまいがするほど、気持ちが悪い」そうだ。
持って生まれた音感の違いに、少々ショックであった。
「まあ、音楽で身を立てる訳でもなし・・・・」とうそぶいてもなんかむなしい。
やっぱり、2章に笙は合わないようだ。

検討を終え、課題を整理した後、帰ると夜になっていた。
机の上には、作曲家のY氏から送られてきた、新曲のピアノ・オルガン伴奏譜が入った封筒が置かれていた。
今日の検討のことは、お伝えしていたが、残念ながら間に合わなかったようだ。頑張ってしていただいたのに申し訳ない思いがした。

何らかの機会に検討させて頂くとして、今後は楽譜を整えながら、収録に向けての準備へと段取りを進めていくことになる。