典楽その音の世界
(2003.01.06UPDATE)  


典楽の源流を求めれば、当然雅楽にたどりつきます。雅楽は、邦楽の原点の一つであるからです。
特に中正楽は、雅楽そのものを規範にして、金光教の儀式に即応するような形で意図的に作られたために、一見、その構成、響き、諸々が雅楽に似通っている、あるいは雅楽に聞こえてしまうといったように感じられることがあります。
しかし、中正楽は、誕生当初のそのような状況を抱えながら、100年以上の間、独自の熟成を重ねて今日へと伝承されてきました。その響きは、祭典の厳かさをより深め際だたせるように。そのリズムは、祭典に臨む祭員(さいいん:祭典を執行するひとたち)の行作の動きに合うように。
そこに、中正楽が持つ独自の空間が感じ取れます。
吉備楽については、音楽そのものが日本独自の音楽文化の香りを十分に漂わせるものです。この吉備楽は、祭典楽をのぞき、いわば人に見せる鑑賞音楽として伝承され独自の展開がなされてきました。明治の初頭に作られたので、その当時の時代背景が色濃く残っており、ある面では、一種のなつかしさを感じさせる音楽です。

着席曲
(参向)
参向(祭典を仕える祭員が神様の前の場に進み出ること)時の中正楽は、きわめて厳粛かつゆったりとしたテンポでおこなわれます。
典楽で使用する楽器のほとんどが使用されており、典楽版フルオーケストラによる演奏といえます。
尺拍子による演奏開始の合図の後、龍笛のソロ(音頭といいます)に先導されて、全楽器の演奏が始まります。
中正楽第3
中正楽第4

退下曲
退下(祭典を終え、祭員が神様の前の場から退場すること)では、参向と比較して、やや早めのテンポで演奏されます
参と同様、典楽で使用する楽器のほとんどが使用されており、尺拍子による演奏開始の合図の後、龍笛のソロ(音頭といいます)に先導されて、全楽器の演奏が始まります。
中正楽第7
中正楽第20

開帳曲
開帳(参向後、神前にかけられている御簾(みす)、あるいは帳(とばり)を開ける行事)曲として使用されている音楽です。
この曲は、尺拍子、篳篥、神楽笛、和琴によって演奏されます。
古楽の催馬楽(さいばら)によく似た曲で、本来は、歌が付随しており、男声歌としてつくられているものです。
天の戸

祭主着座曲
祭主(祭員の最高責任者)が祭詞を奏上するために、神前に進み出る際に演奏する曲です。笙と箏それぞれ1本で演奏されます。笙の先導により、基本的な流れをつくる中で、箏がメロディとして絡みながら、シンプルではありますが独特な響きを聞かせます。
菅掻は、笙と箏での演奏によるものが数曲伝承されていますが、その他、和琴と笙によるものや、笙のみのものなどがあります。
菅掻第1段
菅掻第3段

玉串曲
祭主が祭詞を奏上した後、玉串を奉奠する(祭主が、人間の真心を、榊と紙垂(しで)に載せて神様に捧げる行事)際に演奏する曲です。
構成は、雅楽のいわゆる「音取」に似ています。楽器は1管編成で、笙のソロから始まり、龍笛、篳篥が順次加わりながら、曲を構成していきます。演奏時間は、2分弱の小曲ですが、演奏者の力量が問われる曲でもあります。玉串曲は、数多くの曲が伝承されています。通常は、笙、篳篥、龍笛の3管で演奏されますが、教祖神は、篳篥、神楽笛、和琴で演奏されます。
玉串曲第1
玉串曲 激湍
玉串の調べ
「榊」第2

その他
中正楽のうち番号が振られている曲目は、編成やテンポを変えることにより、さまざまな祭典行事の際に使用できるようになっていますが、玉串曲のように、ある特定の行事のための曲目も少なくありません。
また、葬儀の会葬者玉串時の曲目は、華やかさを消すため打楽器を使用しないで演奏することが好まれます。
中正楽第20(打楽器なし)
神遊調(篳篥、神楽笛による曲)

深緑 吉備楽祭典楽の着席として作曲された曲です。この収録では、歌とともに箏、笙の楽器を使用していますが、本来は龍笛、篳篥と太鼓が加わります。

歌詞、
栄え久しき榊葉に 百枝の松の色まして 清き恵の深緑 立つや野山の春がすみ 晴れわたりたる天が下
道の御祖
吉備楽祭典楽の奉納舞として作られた曲です。一人の奏者(この人のことを親箏と呼びます)によって歌と箏が演奏され、その後、数人が演奏に加わります。途中から、龍笛、少し遅れて篳篥がそれぞれ1管ずつ演奏に加わります。

歌詞
世の中に よき人ながら難義なる 氏子は多しそのかたは すでに死にたる身と思い 欲をはなれて天地の 神に取りつぎあななへば 氏子立ち行き神も亦 助かると云ふ仰せごと 畏み受けて生神は 一生の涯広前に 仕えたまひて天のした 氏子諸々立ちゆかむ 広き真の大道を 開きましけりあなたふと あはれ畏し金光教祖
教団独立百年記念曲 この曲は、平成12年に金光教団が一教独立を果たして百年を迎えたことを記念して作られた吉備舞曲です。演奏形態は、「道の御祖」と同様です。

歌詞
神と人 あいよかけよの大き道 独立なりて今ここに 百年迎ふ ああ尊と
取次の 道に救はる氏子らの 輪を広げゆき助け合ふ よき世築かむ もろともに
金光の み光いよよ天地に 輝きわたり八つ波の み旗はためく あまねく永遠に